円天や女詐欺師に何でだまされるんだろう
使っても減らぬ「円天」なる偽造通貨を喧伝したのは、L&Gの
波会長です。関西一の女相場師も話題になりました。
そんなうまい話になぜ乗るのでしょう。私たちの欲の深さを
痛感します。なければないで欲しい、あればあったでもっと欲しい
もっと欲しい、とキリがありません。底なしの海のように
広く深く欲は広がり、何とか運用しようとしてスッテンテンに
なって泣いているのが実態でしょう。
もっとも、お金がなければ投資できませんから、
「オレはそんな話にゃ乗らないよ」
と豪語できるのは、お金のない人かも。すべての人は無限の欲を
持っていますから、お金がもしあれば、同じことを考えるに
違いありません。欲の恐ろしさを知らない人ばかりです。
無限の欲を、私の仏教の先生である高森顕徹先生は、次の
ような話で教えてくださっています。
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昔、隣接する大国と小国があった。
人口が少なく広大な土地が遊休している大国にたいして、小国は、
人口密度が高く狭小な土地を取りあいコセコセしていた。
大国の王様があるとき、小国の農民たちに触れを出した。
「オレの国へくる者には、土地をほしいだけ与えよう」
「王様、ほしいほどとおっしゃいますが、本当でございましょうか」
半信半疑でやってきた小国の農夫たちはたずねる。
「ウソは言わない。見わたすかぎりといっても区切りが
つかないから、おまえたちが一日歩きまわってきた土地を
与えることにしよう。ただ一つ条件がある。朝、太陽が昇ると
同時に出発し、角々に標木を打ち、太陽の沈むまでに出発点に
もどることだ。その間、歩こうが走ろうが、おまえたちの勝手だが、
一刻でも遅れれば、一寸の土地も与えぬから注意せよ」
農夫たちは、その広大さを想像して胸おどらせた。
さっそく一人の男が申しでて翌朝、太陽とともに出発した。
最初は歩いていたが次第に足が速まり、やがて小走りになり、
本格的に走り始めた。歩くよりも走れば、それだけ自分の土地が
広くなるという欲からである。
当然、標木を打って曲がらねばならぬ所にきていても、欲は、
もっともっとと引きずった。太陽が中天に輝いていることに驚き、
標木を打って左へ曲がって走った。
昼食も走りながらすませる。午後は極度に疲れたが、服も靴も
脱ぎ捨てて走った。もう夕日になっている。足は傷つき、血は流れ、
心臓は今にも破裂しそうだ。しかし今倒れたら一切が水泡になる。
彼は出発点の丘をめざして必死に走る。
そのかいあって、太陽の沈む直前に帰着したが、同時に彼は
ぶっ倒れ、後はピクリともしなかった。
王様は、家来に命じて半畳ほどの穴を掘らせ、農夫を埋めさせて、
つぶやいたという。
「この農夫は、あんな広大な土地はいらなかったのだ。半畳の土地で
よかったのに」
農夫だけではない。みんな欲に殺されるのだ。
『光に向かって100の花束』より
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