読書日記・その3「ホームレスは社会のゴミか」
東京・東村山市で、60代の男性が、75歳のホームレスの背中を牛刀で刺し、
全治1カ月重傷を負わせる事件がありました。
この容疑者、「刑務所に戻りたかった」から刺した、と話しているようで、
それなら、なぜホームレスか。「こいつらなら死んでもいい」と思ったの
かもしれません。
今年、名古屋へ行った時も、東京の新宿や高田馬場でも、ホームレスの人を
たくさん見ました。
私たちは、自分の知らない世界にいかに偏見が強いか、
『16歳の教科書〜なぜ学び、なにを学ぶのか』(講談社)には、
こんな授業が紹介されていました。
社会科を担当する藤原和博氏は、東京都内初の民間出身の
中学校長になった人。「よのなか科」という授業を創設して話題に
なりました。中学生に、「自分がハンバーガー店を出店するとしたら、
どこに造るか」とか、「自分が住みたい家はどんな家か」といった
軽いテーマからディベートし、やがて、自殺志願者とそれを止める
説得者のロールプレイ、安楽死の是非など、いのちの問題を論じて
いきます。
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ホームレス問題を考える授業では、新宿から本物のホームレスの人に
来てもらう。僕の友人でホームレス支援の活動をやっている人間がいて、
彼に協力してもらって。これはもう6年間やっている授業です。
この授業なんか、完全に異世界との遭遇だよね。
先日来てもらった人は、65歳の男性で、中学を卒業したあと
マグロの遠洋漁業を十数年やって、そこから流れ流れて新宿で
ホームレスになった、という人でした。
そして、最初は彼を登場させないで、「ホームレスってどんなイメージ?」
みたいなことを聞くわけです。
そうすると「臭い」「汚い」「駅で寝てる人」「やる気がない」といった
マイナスイメージばかり。男の子の中には「社会のゴミだ」とか
「排除してしまったほうがいい」みたいなことを言う生徒も出てきます。
続いて、本物に登場してもらう。
ところが先日の授業では、そのホームレスの男性が感極まっちゃって、
生徒たちの前でいきなり泣き出してしまったんですよ。もちろん、
生徒たちはものすごいショックというか、インパクトを受けていた。
でも、実際にホームレスの人に登場してもらうと、それまでの
一方的なマイナスイメージが変化するんですね。
自分がどれだけ偏ったイメージで物事を観ていたのか、よくわかってくる。
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駅で寝ている人を見ると、「この人にも、生きる目的があるのに……」
と思いますが、自分にはどうすることもできません。行政の力で、
雨露しのげる建物にこの人たちを集めて、コンビニに期限切れ弁当でも
いいから提供させ、それを与えて、命をつなぐことはできないのか。
人間である間に、せめて一句の法文でも聞かせられないのか。
そんなことを考えます。
幸せにも、恵まれた生活をし、法施したい相手もたくさんある私です。